石油大国の一つ、サウジアラビア王国において新しいエネルギー源を求めようとしている。今年のRD20 に初めて参加しようとするKACAREKACARE(King Abdullah City for Atomic and Renewable Energy Energy:アブドゥッラー国王原子力・再生可能エネルギー都市)は、政府系の原子力と再生可能エネルギーを促進しようという研究調査組織である。KACARE Local Content and Capability Sector Head のHisham Sumayli 氏にKACARE の役割とRD20 への期待について聞いた。
KACAREは環境問題を解決するため、原子力と再生可能エネルギーの推進を通して、課題解決に取り組んでいる。活動の一つが国内の大学や産業界とのコラボである。その目的は、クリーン技術とそのソリューションを見つけ、開発し、普及させることだ。「私たちが王国内で直面している経済的・技術的な問題を克服するため、技術のプログラムを行っている」、とSumayli 氏は語る。これによりエコシステムにおけるニーズに答え、産業的なインパクトを作り出すように、大学と産業界のギャップを埋めようとしている。KACARE は、大学と協力して、既存の研究室やインフラを活用している。
その技術国産化のプログラムの一例が、産業界への応用の一つ太陽熱システムだ。この応用では、産業界は太陽の熱を利用する。これまでの熱源は、電気ヒーターから熱に変換して生み出していたが、このプロジェクトでは太陽熱を直接利用する。これは昨年、太陽熱プロセスの実証を産業界に向けて募集したものだが、産業界では起業し太陽熱プロセス技術を開発したところがあり、その企業はKACARE のプログラムに応募した。現在は、その技術の実現を進めており、新技術をテストし応用できることを示そうとしている。
現在ほとんどの熱エネルギーは化石燃料や電気から直接生成されている。しかし、KACARE が分析したところ、太陽熱エネルギーを直接産業用に利用できる可能性があることが分かった。この技術なら、サウジアラビア国内の産業にもインパクトを与えられると確信した。
太陽熱以外のテーマもある。再生可能エネルギーによる脱塩技術は不可欠である。海水を真水に変える再生可能エネルギー技術は極めて重要である。さらに再生可能エネルギーによるマイクログリッドに関しても活動している。サウジアラビアはたくさんの小都市が地方に点在しているため、それぞれの地方ごとに再生可能エネルギーのマイクログリッドが必要とされている。再生可能エネルギーを使った冷却技術にも需要があり、再生可能エネルギーを冷却システムに統合することを勧めている。
サウジアラビアは国際的な研究所とのコラボレーションも行っている。例えば、有名な相手は米国のNREL(National Renewable Energy Laboratory)である。技術テーマに関して、フォーカスすべき分野と産業界からの提案に対する評価プロセスを開発した。
日本でも産業技術総合研究所(AIST)やNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)とも共同で取り組んでいる。例えば地域に即した標準を決めている。サウジでは、特に温度と熱が厳しいため、産総研と一緒にサウジに適した標準規格を開発している。NEDO とは、再生可能なエネルギーを使ったマイクログリッドのプロジェクトを進めており、それをサウジに適用しようとしている。
成功した国際的なコラボレーションのプロジェクトの例としては、太陽熱システムがある。サウジ国王大学(King Saud UniversityUniversity)が米国のSandia National Laboratories と協力して太陽光集光システムを開発している。特に、第3 世代の「落下粒子技術(falling particle technology technology:蓄熱性の高いセラミック粒子の熱媒体を落下させ熱を運ぶ方式)の太陽光集光システムの規模は、許容できるコストで実現を期待できるシステムだという。太陽熱のテーマは単なる熱の発生だけではなく、太陽熱プロセスやその応用、蓄熱までカバーしている。「正確な定量的なエネルギー出力の数字は持ち合わせていないが、経済的には、この太陽光集光システムによる発電では1kW あたり、将来的に6 セントという見通しを得ている。」とSumayli 氏は言う。
サウジアラビアのKACARE は、これまでのRD20 にはまだ参加したことはないが、今年のRD20 には参加する予定だ。Sumayli氏は、「サウジアラビアが実際にどのような技術プログラムをやってきたか、研究テーマや構成、標準化規格の開発、大学と企業とのコラボレーションなど共有しよう思う」、と語っている。
日本の大学とのコラボレーションはまだないが、今回日本に行くことで、大学やさまざまな研究機関とのコラボレーションに期待したいという。また、「ほかの研究機関がエコシステムとどうやって相互に活動しているのか、大学との研究開発をとやって進めているのか、それらをどうコーディネートしているのか、活性化させているのか、など知りたいことが山ほどある。こういったプログラムを知り体験することで、KACARE の役に立つだろう」とSumayli 氏は信じている。
セミコンポータル 編集長 津田建二