Taskforces
02. 水素LCSA(ライフサイクル・持続可能性分析)タスクフォース

水素ライフサイクル・持続可能性分析(Life Cycle and Sustainability Analysis: LCSA)タスクフォースでは、水素製造のライフサイクル全体にわたるカーボンフットプリント(温室効果ガス排出量)やその他の持続性指標の分析方法について、RD20参加機関による違いの理解を深めた。
水素は脱炭素化に向けた重要なエネルギーキャリア(※1)であると広く認識されており、多くの国が国家水素戦略を策定していることから、信頼性の高いLCSAは意思決定に不可欠である。しかし、各国の置かれた状況や境界条件、エネルギー源、利用可能なインフラの違いによって分析結果の整合性が取れておらず、各国間で比較することが難しい。
(※1)エネルギーを貯蔵・輸送するための物質やシステムのこと。

主な情報

リーダー:Amgad Elgowainy博士(https://www.anl.gov/profile/amgad-a-elgowainy
共同リーダー:Nawshad Haque博士(https://people.csiro.au/H/N/Nawshad-Haque
メンバー機関:
アルゴンヌ国立研究所(米国)
連邦科学産業研究機構(CSIRO、オーストラリア)
科学産業研究機関(CSIR、南アフリカ)
フラウンホーファー太陽エネルギーシステム研究所(Fraunhofer ISE、ドイツ)
フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA、フランス)
欧州委員会 共同研究センター(EC-JRC、EU)
国立科学研究センター(CNRS、フランス)
産業技術総合研究所(産総研、日本)
国家研究イノベーション庁(BRIN、インドネシア)
カナダ国立研究機構(NRC、カナダ)
エネルギー資源研究所(TERI、インド)
活動期間:2023年の第4回RD20国際会議後から2024年の第5回RD20国際会議前まで(第4回RD20国際会議において、水素LCSAをテーマとするタスクフォースを設置すべきとの合意を受けて発足)
現在の状況:活動完了

目標

水素LCSAタスクフォースでは、カーボンフットプリント等を計算するための適切な方法を理解することを、活動の主な目的とした。具体的には以下の通りである。
(1) 水素のライフサイクル分析および持続性指標に関する各国の状況、優先課題、ロードマップの概要を示すこと。
(2) 研究開発、実証、実験について、国際レベルでの優先事項を提案すること。
(3) RD20のメンバー機関国に対し、共通の意見に基づき的確な助言を行うこと。

研究の概要

本研究の目的は、ライフサイクル分析の手法と持続性分析の指標における共通点を見出すことである。タスクフォースメンバーによる合意の結果、各国における水素製造のライフサイクル分析についてのステータスレポートは、次のように整理された。
(1) 水素(H2)または水素キャリアの炭素強度(※2)に関する、共通の指標および整合された手法を見出すこと
(2) 分析結果を左右する前提条件や境界条件を、性能要件とともに共有すること
(3) LCAインベントリを強化するためのデータ共有

その他、以下の考慮すべき事項が含まれた。
(a) 持続性及び社会受容性を組み込むこと
(b) 安全性の観点やリサイクルの可能性を組み込むこと
(c) 地域特性や環境の観点を考慮すること
(d) 国際水素・燃料電池パートナーシップ(IPHE)のタスクフォースや、その他のイニシアチブとの連携
(e) 「理想的な」ケースだけでなく、実装を見据えた現実的なシナリオや解決策を分析すること
(※2)単位水素量(水素1kg)あたりの温室効果ガス排出量のこと。

進捗と成果

水素LCSAタスクフォース参加国による、ステータスレポートは、学術誌「Frontiers in Energy」と「Frontiers in Energy Research」に掲載されている。
今後、水素のライフサイクルアセスメントについて、より統一された標準的な手法の開発と適用を進める一方で、各国固有の条件や状況とのバランスを取ることが必要である。こうした手法は既に作成されたレポートに適用することが可能であり、その結果として得られた知見を、将来のRD20の関連イベントで発表することを検討したい。

掲載済み論文(全て英語):
本タスクフォースの成果のうち、4カ国の国別のステータスレポートが学術誌「Frontiers in Energy」(第19巻第6号、2025年12月)の特集号の一部として掲載され、また米国のステータスレポートは学術誌「Frontiers in Energy Research」に掲載された。

掲載誌:「Frontiers in Energy」第19巻第6号、2025年(2026年より「Engineering Energy」に改称)
https://journal.hep.com.cn/fie/EN/2025/19/6
(日本)
タイトル:Life cycle CO2 emissions of international hydrogen supply chains envisaged in Japan(日本で想定される国際水素サプライチェーンのライフサイクルCO2排出量)
著者:Kudoh, Y.,Ozawa, A.
DOI: https://doi.org/10.1007/s11708-025-0979-3
(オーストラリア)
タイトル:Life cycle assessment methodology evaluation and greenhouse gas impact of hydrogen production routes in Australia(オーストラリアにおける水素製造のLCAおよび温室効果ガス影響)
著者:Musa, M.,Hosseini, T.,Lai, T.,Haque, N.,Giddey, S.
DOI:https://doi.org/10.1007/s11708-024-0962-4
(南アフリカ共和国)
タイトル:Life cycle assessment of green ammonia production at a coastal facility in South Africa(南アフリカ沿岸施設におけるグリーンアンモニア製造のライフサイクル評価)
著者:Stafford, W. H. L.,Chaba, K. J.,Russo, V.,Goga, T.,Roos, T. H.,Sharp, M.,Nahman, A.
DOI:https://doi.org/10.1007/s11708-025-1013-5
(カナダ)
タイトル:Life cycle assessment of hydrogen production pathways to support hydrogen decarbonization policies in a Canadian context(カナダにおける水素脱炭素化政策を支援するための水素製造のライフサイクル評価)
著者:Gonzales-Calienes, G.,Kannangara, M.,Yang, J.,Shadbahr, J.,Bensebaa, F.,Alvarez-Majmutov, A.,Chen, J.,Ghavidel Mehr, N.,Benali, M.
DOI:https://doi.org/10.1007/s11708-025-1008-2

掲載誌:「Frontiers in Energy Research」12巻、2024年
(アメリカ合衆国)
タイトル:Environmental life-cycle analysis of hydrogen technology pathways in the United States(米国における水素技術の環境ライフサイクル分析)
著者:Elgowainy, A.,Vyawahare, P.,Ng, C.,Frank, E.D.,Bafana, A.,Burnham, A.,Sun, P.,Cai, H.,Lee, U.,Reddi, K.,Wang, M.
DOI:https://doi.org/10.3389/fenrg.2024.1473383