水素TEAタスクフォースは、参加機関による技術経済性分析手法の違いについて理解を深めることを目的としている。
技術経済性分析(Techno-Economic Assessment: TEA)は、新規エネルギー技術の競争力や研究開発の機会に関する情報を提供するものである。競争力のある水素製造価格の実現は、水素をエネルギー源として広く普及させる上で極めて重要であり、正確なコスト評価は投資判断の重要な材料となる。しかし、分析手法や前提条件が各機関で異なると、技術の状況を適切に理解できないために意思決定が難しくなる。
リーダー:Mark Ruth氏(NLR)、Tara Hosseini博士(CSIRO)
メンバー機関:
フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA、フランス)
科学産業研究機関(CSIR、南アフリカ)
連邦科学産業研究機構(CSIRO、オーストラリア)
韓国エネルギー技術研究院(KIER、韓国)
産業技術総合研究所(AIST、日本)
ロッキーズ国立研究所(NLR、米国)
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン/英国エネルギー研究センター(UKERC、英国)
スリランカ情報技術大学(SLIIT、スリランカ)
発足:2024年2月(2023年10月に日本で開催された「ギガトン水素ワークショップ」および第5回RD20国際会議での議論を踏まえ、水素TEAの手法と結果の比較の必要性が提起されたことに基づく)
現在の状況:活動中
本タスクフォースの目的は次の通り。
(1) 各国で採用されているTEAの手法や前提条件の差異を特定する。
(2) 技術的な前提条件、経済的パラメータ(割引率、税金、インフレなど)、環境影響の考慮、政策上の優遇措置や補助金などの、水素製造コストに影響を与える主要な要因を特定する。
タスクフォースのメンバーは、基準シナリオを用いて各機関のコスト試算を比較した。作業を効率化するため、太陽光発電で発電した電力を用いた水電解水素がエンドユーザーによって利用されることを想定した。また、基準シナリオで想定する地域として、いずれのメンバー国も現時点でプロジェクトを実施していない地域である、スリランカ南部を選定した。スリランカはRD20メンバー国ではないが、スリランカ情報技術研究所(SLIIT)にもタスクフォースへの参加を依頼した。
本分析では、メンバー機関それぞれが保有するツール、コストデータベース、前提条件を用いて、基準シナリオにおける均等化水素コスト(Levelized cost of hydrogen: LCOH)※を算出し、それぞれの計算結果の差異と、それが生じる要因について理解することを試みた。
※水素製造設備の寿命期間を通じてかかる総コストを、同期間に製造できる総水素量で割り、水素1kgあたりの平均コストとして表した指標。
タスクフォースの分析では、試算されたLCOHには水素1kgあたり4米ドル程度の差が生じることが示された。差異の主な要因は、太陽光発電および電解装置のコスト、太陽光発電の性能、および設置や資金調達などに関する前提条件の違いによるものであった。また、設備コスト・運用コスト・エネルギーコストの区分定義が各研究機関の間で統一されていないことも、差異の比較と解釈を困難にしていることが分かった。