RD20はカーボンニュートラルの実現に向けて、世界最先端の技術開発を行うG20各国・地域の主要な研究機関による国際的な研究開発の枠組みです。
RD20メンバー機関の紹介などの記事を毎月1回お届けします。第二回は日本のNIMSをご紹介します。
RD20に日本から参加している機関のひとつに国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)があります。7つある研究センターのひとつ、エネルギー・環境材料研究センター(GREEN)は構造材料研究センターなどとともに、脱炭素に向けた材料開発に取り組んでいます。
NIMSの環境報告書2023のなかで、NIMSが取り組む3つの重要プロジェクトのひとつとして、「カーボンニュートラルプロジェクト」が紹介されています(日本語のみ)。
→URL https://www.nims.go.jp/nims/disclosure/hdfqf10000001742-att/hdfqf100000017dp.pdf
以下に、環境報告書2023から該当文章を引用し、「カーボンニュートラルプロジェクト」の概要を紹介します。
『脱炭素に向け、再生可能エネルギーの有効利用や水素インフラの構築が急がれる。本プロジェクトのターゲットは「蓄電池」「太陽電池」「水素関連材料・技術」だ。「蓄電池」「太陽電池」には、データ駆動型研究開発手法でアプローチする。高いイオン伝導度を持つ酸化物全固体電解質の開発や、高エネルギー密度蓄電池用の電極材料・液体電解質の探索を実施している。また、ペロブスカイト型太陽電池について、デバイス作製プロセスにおける複合的要因を制御することで、発電効率の飛躍的な向上に挑戦中だ。一方、「水素」については、高効率な水素冷却・液化を可能にする「磁気冷凍システム」の開発や材料探索、データ駆動による水分解用電極触媒の探索、構造用材料の水素脆性に関する学理追求といった多角的な研究開発を展開。さらに、水素エネルギー利用を視野に、データ駆動で超耐熱材料の設計を行う特性予測プログラムを開発中だ。』
また、環境報告書2023では、環境研究のひとつとして「 革新的水素液化技術への挑戦 ~実用的な磁気冷凍法による水素液化コスト削減に道~」が紹介されています。金沢大学や大島商船高等専門学校とともに、科学技術振興機構(JST)未来社会創造事業の一環として行われています。
磁気冷凍による水素エネルギーの実用的な「液化」システムに関する研究開発では、超伝導磁石の磁場中に磁性体を出し入れすることで、発熱の少ない磁場変化を与える機構を開発しました。さらに、通常の磁気冷凍方式に比べ冷却動作温度範囲の拡大が可能な能動的蓄冷式磁気冷凍(AMRR)に最適化した熱交換器を開発することで、水素液化温度で安定したAMRRサイクルを実現し、世界で初めてAMRRによる水素の液化に成功しました。
今後、より高出力、高効率の磁気冷凍機を目指すことで、低コストで省エネルギーな水素液化プラントの実現が期待できると報告しています。
→プレスリリース 革新的水素液化技術への挑戦~実用的な磁気冷凍法による水素液化コスト削減に道~
URL https://www.nims.go.jp/press/2022/04/202204110.html
→Applied Physics Expressに掲載されています(英語のみ)。
URL https://iopscience.iop.org/article/10.35848/1882-0786/ac5723