英国エネルギー研究センター(UKERC:UK Energy Research Centre)は、25年にわたって活動を続けてきたコンソーシアムであり、英国全土の20を超える機関で構成されています。英国研究・イノベーション機構(UKRI:UK Research and Innovation)傘下の研究会議から資金提供を受けるUKERCは、エネルギーシステム全体を対象とした研究を行うことを目的とし、継続的に見直されるプログラムの中で設定される優先課題の下、工学、経済学、社会科学にまたがる学際的なアプローチを採用しています。2020年からUKERCの所長を務めるRob Gross氏は、英国の政府各省庁や関係機関、議会、産業界での助言役を担ってきました。また英国内での活動に加え、世界銀行や国連開発計画(UNDP)、国際エネルギー機関(IEA)など国際機関の活動にも貢献しています。英国がネットゼロ目標の達成に向けて移行する過程で直面する課題と、国際連携におけるUKERCの役割についてお話を伺いました。
UKERCは、英国内の複数の技術研究拠点――水素は2機関、太陽光1機関、洋上再生可能エネルギー1機関など――の調整役を担っています。ただしGross氏は、UKERC自身も学際的な一次研究を行っていることを強調します。「研究対象は工学から技術・経済性評価、社会科学に至る幅広い分野にわたりますが、その焦点はエネルギーシステム全体に置かれています。」この研究は主に英国内を対象としているものの、地政学やエネルギー安全保障の研究に見られるように、国際的な文脈の中で進められています。UKERCはこれまで一貫して、システム全体を捉える視点からの理解を目指してきました。この視点は、先行する国々が再生可能エネルギーのさらなる大規模導入に向けた移行段階にあり、今後の発展においてシステムの柔軟性、電化、エネルギー貯蔵などが中心的な課題となっている現在、とりわけ重要となっています。

英国は、2050年のネットゼロ達成に向けた法的拘束力のある目標を掲げており、UKERCへの資金提供も明確にその達成を目的としています。英国はこれまでに炭素排出量を50%削減し、ネットゼロへの道のりの半ばにいます。これを主に牽引してきたのは、クリーンな発電技術の導入拡大と石炭利用の段階的廃止です。化石燃料の利用によって産業革命が始まった国として、英国も共に責任を負っており、化石燃料からの脱却と気候変動に関する問題を極めて深刻に受け止めています。Gross氏によれば、UKERCの研究分野の一つは、新たな再生可能エネルギー技術と、再生可能エネルギー比率が高い電力系統の運用との相互関係を解明することです。グレートブリテンにおける再生可能エネルギーの比率は、21世紀初頭の1~2%から、現在では約40%に上昇し、原子力を含むクリーンな電源は今や英国の電力の約65%を占めるまでになりました。2030年という早い時期にクリーンな発電を実現する新たな計画も議論されています。同時に、電気自動車の比率が高まり、暖房におけるヒートポンプの役割も拡大していきます。この野心的な目標と、それに伴うさまざまな変化は、経済・技術面でシステム上の大きな課題をもたらすだけでなく、新たなインフラの建設に対する社会的受容という課題も生んでいます。

多くの先進国は、ここ2世代にわたって、大規模なエネルギーインフラの建設を行ってきませんでした。現在英国にある高電圧送電網の多くは、1960年代に整備されたものです。「こうした送電網を、大量の洋上再生可能エネルギーを接続できるよう抜本的に再構築する必要があります。我々は北海に宿る大きな可能性に恵まれているのですから。」また英国は欧州大陸各国との国際関係も大幅に拡充してきました。ドイツ、デンマーク、オランダと英国をつなぎ、電力をあらゆる方向に提供できる洋上再生可能エネルギー・ハブの構想について検討する必要があります。Gross氏は、これも移行を進める中で直面する課題の一つにすぎないとした上で、こうしたあらゆる取り組みの中でイノベーションが極めて重要な役割を果たすことは明らかだと強調しました。
今年、英国南部は前例のない猛暑と干ばつに見舞われました。そのため、国民の圧倒的多数が、対策の必要性を理解しています。加えて、世界各地の出来事が化石燃料価格に影響を及ぼしています。英国のエネルギーシステムは、とりわけ国際的なガス価格の動向に敏感です。ガス価格が電力価格を決定するため、ガス価格の上昇が電力価格を押し上げます。現在、この結び付きを緩和するための対策が進められており、この分野ではUKERCの研究が分析の最前線にあります。Gross氏は、電力市場と政策の分析においてUKERCが世界をリードしていると考えており、UKERCはガス価格と電力価格の連動を断ち切る後押しをする変革を提唱してきました。こうした中で今年、家庭向けのガス料金が約25%上昇する一方、電気料金の上昇は4%にとどまっていることは注目に値します。Gross氏は、すでに両者の連動が弱まりつつあるものの、この流れをさらに押し進める必要があるといいます。「RD20が掲げる課題とネットゼロに向けたUKERCのアジェンダ、そして手頃なエネルギー価格との間には、非常に強い結び付きがあると考えています。」

Gross氏は、1980年代より前には、ほとんどの電力システムが垂直統合型の独占体制で運営されていたと振り返ります。その後、民営化と自由化が始まり、初めて市場が形成されました。ただし、それは今日と比べて電源構成が安定していた、比較的変化の少ない時期のことでした。市場では、確立された考え方である限界費用に基づく価格設定が採用されました。この市場モデルに今、限界費用がゼロの変動性再生可能エネルギーが参入しています。均等化発電原価に基づくと、風力と太陽光は、現在、多くの地域で最も安価な電源の一つとなっています。投資家に安定した投資環境を提供するため、再生可能エネルギーと新設原子力発電所を対象に、差額決済契約[K1.1]制度が導入されました。本制度は補助金を支給する仕組みとして想定されていました。しかし、再生可能エネルギーの比率が高まるにつれて、差額決済契約の対象となる発電事業者が大きな割合を占めるようになり、卸電力市場が本来の機能を果たすことが難しくなっています。Gross氏によれば、今後起こるさまざまな変化を踏まえると、最も効率的に機能する市場の仕組みは、まだ実現していません。これこそが、現在のエネルギー政策と規制の経済学が直面する本質的な課題です。将来の市場がどのような形であるべきかについては、今なお議論が続いています。また、世界各地のエネルギーシステム運用者の中央制御室も、デジタル時代に対応する必要があります。分散配置された多数の蓄電池、小規模な太陽光発電、需要の柔軟性を統合するには、はるかに高度なデジタルシステムが求められます。「我々は今この方向に進んでいます。ただし、加速する必要があります」とGross氏は指摘しています。
「RD20は、世界各地の主要研究機関の優れた科学者と交流し、対話できる素晴らしい機会です。」Gross氏は、自身が大規模な国立研究所を代表するわけではなく、各地に分散する複数の研究機関を代表する立場であるものの、RD20に英国代表として参加できることを光栄に思うと話します。「UKERCの研究は、システム全体や市場、より高い比率での再生可能エネルギーの統合、社会的受容、そして経済に重点を置いています。水素、太陽光発電、合成燃料など、何をどの程度優先するかも含め、他国において視点や優先課題がどのように違っているかを知ることができるのは、非常に魅力的です。」UKERCは、大西洋を隔てた米国や、オーストラリアなどの旧英連邦諸国と協力関係を築いており、EUのHorizonプログラムとの連携も続けています。欧州エネルギー研究アライアンス(EERA:European Energy Research Alliance[K2.1])では、UKERCが英国代表です。国際的な学術・研究コミュニティが声を上げ、直面する課題を率直に共有し、協力して取り組める機会を探ることが極めて重要です。
最後にGross氏は、2027年にスコットランドのストラスクライド大学のテクノロジー・イノベーションセンターにおいて「RD20サマースクール」を開催できることをUKERCとして楽しみにしていると述べました。同大学は、技術分野に力を入れる、英国でも特に革新的な大学の一つです。スコットランド自体も、その風力資源や新たな揚水発電所の建設、二酸化炭素回収・貯留(CCS)事業などを背景に、英国の再生可能エネルギー革命のまさに中心地となっています。「我々はRD20サマースクールの開始当初から、積極的に参加してきました。今度のプログラムでは、若い参加者がエネルギーシステムの計画者や設計者としての役割を担い、現実世界での意思決定や課題を、没入感をもって体験できるような双方向セッションを構想しています。」若手研究者が一堂に会し、世界各地の同世代の研究者と出会うことで得られる恩恵は、いくら強調してもしすぎることはありません。「ですからRD20参加国の皆さん、イノベーションに取り組む皆さん、前に進みましょう。エネルギー転換を牽引していくのは、我々のような人間しかいないのですから。」