Outcome
第1回RD20国際会議の成果
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第1回目のRD20国際会議では、クリーンエネルギー技術分野におけるG20各国の研究開発に関する現在の動向と将来像を議論いたしました。

RD20議長サマリー

1. 産業界、金融界、アカデミアのリーダーがTCFDサミット、ICEF及びRD20という東京で開催された3つの国際会議に集結し、「環境と成長の好循環」を実現するための具体的なイニシアティブについて議論した。第1回RD20会合では、G20の研究機関のリーダー達が集まった。

2. RD20会合で議論されたポイントは次のとおり。
(1) 気候変動問題を解決するうえで、エネルギー・環境分野におけるイノベーションが重要であることを議論した。
(2) 水素利用やCCUSのような革新的な技術を含む各研究機関のクリーンエネルギーに関する研究開発の最新状況と今後の方向性を確認した。

3. 各研究機関が共通して直面している研究課題は次のとおり
(1) 再エネの大量導入に向けた研究開発の早期拡大が急務であること。このためには経済性、環境親和性、社会受容性、安全性に配慮した再エネ由来の電力、熱、移動エネルギーの供給システムの確立が必要であること。
(2) 国やセクターによって課題は異なるが、電力部門に関しては、需給変動に対応するために貯蔵も含めた柔軟なエネルギーマネージメントシステムの構築が必要であること。産業、運輸部門には、電動化や水素の活用等による再エネ導入促進が必要であること。

4. 第1回RD20会合の結果、次の事項について認識を共有した。
(1) G20各国の研究機関が果たす役割、その相互連携ならびに国際標準化に取り組むことの意義は大きいこと。
(2) RD20メンバー機関間での連携を強化し、アライアンスを構築することで、具体的な共同研究開発に発展させていくことが重要であること。
(3) 各研究機関が発表した内容をまとめた「RD20 Now and Future」は、今後の国際連携の道標となり得ること。
(4) ICEFとの連携が有益であること。

5. 今回の会合は、各国とも研究開発の段階は異なるものの、その方向性は共通であることを示した。この意識をG20の研究者と共有できたことを強調したい。

6. 第1回RD20の成果と勢いを今後につなげるべく、第2回RD20を2020年10月に日本で開催することとした。

RD20会議サマリー

ビデオメッセージ: 菅原経済産業大臣

菅原経済産業大臣は、参加20か国で活躍する12万人の研究者のネットワークを強化しイノベーションを加速することがRD20の目標であるとし、9月の就任翌日に台風の被災地を訪問した経験を通して気候が暮らしにもたらす影響を痛感し、人の力を結集することの重要さを再認識したと語りました。また、気候変動に対する日本政府の取り組みを紹介し、困難な非連続的イノベーションを共に実現するために、RD20での活発な議論を期待するとコメントを寄せました。

特別講演:ICEF運営委員会 田中委員長

田中委員長は、非連続的イノベーションを通した速やかなピークアウトと精力的な二酸化炭素排出削減の必要性を強調し、それに向けたICEFの活動を紹介。また、IAEAが2年前に予想したエネルギー産業の4大革命の説明に加えて、田中氏自身が発見した5つ目の革命「需要主導型エネルギー変革」を紹介。ESG・SDG投資の増加に伴い、再生可能エネルギーのみを使う企業が増えるという需要側の変化が、エネルギー産業の変革を加速するというものです。

特別講演:トヨタ自動車株式会社 内山田取締役会長

内山田取締役会長は、同社が環境問題を経営上の最重要課題と認識している旨を述べ、トヨタ環境チャレンジ2050等の取り組みを紹介。水素を燃料とするFCEVを究極のエコカーと位置づけ、2020年末の次期ミライ発売や商用車への拡大といった計画を明かしました。さらに、電動自転車の普及加速のため、車両電動化システムの他社への無償提供や23,700件の特許の公開を表明。来年のオリンピックでは水素社会の一部を世界に紹介する意向を示しました。

特別講演:東京理科大学 藤島栄誉教授

藤島栄誉教授は、1972年にネイチャー誌に掲載された酸化チタンの光触媒作用の発見の経緯を紹介。エネルギー変換効率が低いことから、自身は酸化チタンの別の性質に着目し、病院の手術室の壁面や車のサイドミラー等に使われる技術の開発に貢献してきましたが、人口光合成に取り組む研究者らのおかげで光触媒のエネルギー効率が向上していることを説明し、宮崎県での事例を紹介。さらに、ダイヤモンド電極を用いて二酸化炭素を減らす方法を解説しました。

特別講演:一般社団法人 カーボンリサイクルファンド 北村副会長

北村副会長は、SDGsの目標を引用しながら、イノベーションによって気候変動対策と電力へのアクセス改善に取り組む必要を訴えました。2019年をカーボンリサイクル元年と表現した上で、新技術のコストを下げ生産性を上げる必要性を強調。企業から資金を集めてカーボンリサイクル技術の研究開発機関に提供することや国際的な規則を作ることが組織の目的であると説明し、協力を呼びかけました。

セッション1: Status of Clean Energy Technologies; Now & Future

アルゼンチン、ブラジル、カナダ、中国、EU、フランス、ドイツ、インドネシア、日本、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、トルコ、英国を代表する17機関がクリーンエネルギー技術の研究開発と国際協について発表。多くが水素、太陽光、風力、地熱、水力、バイオマスなど多様なエネルギーに関する研究について述べた他、国際協働事例や自国の温室効果ガス排出削減目標を紹介。技術的な情報にとどまらず、業界横断的・学際的な協働、市民の参加・啓発、循環型経済といった、より概念的な内容にも言及がありました。

セッション2: Status of Clean Energy Technologies relevant hydrogen , CCUS technologies: Now & Future

豪州、フランス、ドイツ、イタリア、日本、南アフリカ、米国の7か国の参加機関が水素とカーボンリサイクルに関する最先端の研究について発表を行いました。フランスはクリーンでスマートで持続可能かつ経済的に妥当なエネルギーシステムの必要性を強調し、ドイツは太陽光発電が最も安価な電力源になりつつあることを示しました。イタリアはクリーンな水素の生産手法を例示し、豪州と南アフリカは、自国の資源を活用した水素輸出の計画を明かしました。日本のNIMSは開発した新技術や新素材を紹介し、米国は異種エネルギーの相互変換など重要な研究分野を指摘しました。

総合討論

初めに産業技術総合研究所の小林哲彦理事が参加者らの発表を整理し、続いて参加者が各々コメントしました。多くの参加者が会議開催に謝意を示した他、協働を模索したい具体的な分野を挙げた参加者もいました。さらに、世界的な基準や枠組みの検討、社会的含意や行動面の研究、環境負荷のライフサイクル分析と評価、政府や産業界の巻き込み、若手科学者の参加、新技術の大規模実証、エネルギー変革の利益の数量化など、今後検討すべき点について多くの参加者から提案がなされました。

政務挨拶: 青山文部科学大臣政務官、八木環境大臣政務官

共催機関を代表し、文部科学省の青山政務官と環境省の八木政務官が閉会の挨拶を行いました。青山政務官はリチウムイオン電池開発の功績でノーベル化学賞を受賞した吉野氏らの話を引き合いに出し、研究による知の創出を通して社会課題を解決する重要性を強調しました。八木政務官は、「イノベーションによる環境と成長の好循環」という日本の長期戦略コンセプトに触れ、具体的な施策を紹介した上で、RD20を通した国際協働の拡大に期待を示しました。