Special Interviews
2025.11.28
第26回
2025年第7回RD20:アフリカ、そしてクリーンエネルギー分野での連携の機会
Dr. Abdelilah Slaoui, CNRS Deputy Research Director, Head of Energy unit of CNRS, and UM6P professor Abdessamad Faik, Director of LIMSET
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2025年第7回RD20:アフリカ、そしてクリーンエネルギー分野での連携の機会

2026年は、RD20のアジェンダにおいてアフリカが大きな存在感を示す年になるだろう。RD20国際会議が南アフリカで10月に開催されるのみならず、モロッコのモハメッド6世工科大学(UM6P)で5月にRD20サマースクールが開催される予定だ。
第4回となるサマースクールプログラムをコーディネートしているのは、フランス国立科学研究センター(CNRS)で副研究ディレクターを務めるAbdelilah Slaoui博士だ。

フランス国立科学研究センター(CNRS)
副研究ディレクター、エネルギーユニット長
Abdelilah Slaoui博士 ©産総研

共通の関心事項を特定するためのコミッティー

Slaoui氏は、太陽光発電と再生可能エネルギー技術の専門家だ。また、RD20のアクションコミッティーのメンバーでもある。博士によれば、2026年のサマースクールをモロッコで開催するというCNRSの提案が最初に出されたのは同コミッティーを通じてであった。
「アクションコミッティーはRD20の全体的な戦略を管理しています」とSlaoui氏。「我々は、RD20メンバー機関にとって戦略的な科学的および技術的なテーマについて議論して、共通の関心事項を見極めます。例えば、RD20国際会議のテクニカルセッションやワークショップで取り上げるべきトピックをアクションコミッティーで選定しています。」
Slaoui氏によれば、どのテーマでRD20タスクフォースを設置すべきかを決定するのも同コミッティーであり、同様にサマースクールの開催地についても共同で決定する。コミッティーは年次国際会議の運営だけにとどまらない活動を行っているとのことだ。RD20を機能させ連携を促進するための「手段や仕組み」を考案し、RD20事務局と協力して運営面からその「実現」に向けた方法を決定する。
コミッティーでの彼自身の役割は、クリーンエネルギーに関して、自身の所属機関であるCNRSの立場や意見を代表することである、とSlaoui氏は言う。「CNRSはエネルギー分野において研究開発上、特定の優先事項があります。それが他のRD20メンバー機関でも共通かどうかを確認したいのです」とSlaoui氏。もし異なるのであれば、私はその理由を理解しようと務め、その学びをCNRSに持ち帰ることができればと思います。同様に、我々の関心事項や優先事項を他の機関にも有益な形で共有しています。」

モロッコでのサマースクール

そうした関心事の中には、Slaoui氏自身が主導してきたサマースクールプログラムも含まれている。Slaoui氏によると、一週間対面で開催される同プログラムは、若手やキャリア初期の研究者と、講義を行ったり自身の経験を共有することができるシニア研究者を引き合わせることを目的として設立されたものだ。プログラムには参加者が協働するプロジェクトが盛り込まれており、特定の「エネルギー」課題についての意見を交換し、解決策を一体となって提示する場を提供します。
Slaoui氏によると、その目標は「既成概念にとらわれずに思考する機会を参加者に与えること」だ。若手研究者がさまざまな国や地域の仲間とネットワークを形成し、新しいアイデアや見解に触れ、お互いの利益のために自らの意見を共有する機会を持つことが期待されている。
2026年のサマースクールがアフリカの国で開催されることは、アフリカの人口推移を考慮すれば極めて重要な意味があることだ、というのがSlaoui氏の考えだ。
「アフリカはこれから経済的に成長し、人口も増加していきます」とSlaoui氏。「その地理的な位置と長い歴史からして、モロッコはRD20にとってアフリカへの入口になってくれると私は考えています。」
アフリカ諸国からの多くの若い学生が現在、モロッコの大学や工科大学で学んでいる。例えば、40以上の国籍からなるUM6Pの教員と学生で構成されており、その多くがアフリカ諸国の出身だ。また、地理的な要因から、UM6Pのキャンパスでサマースクールを開催することによって、関心あるアフリカの若手研究者が参加しやすくなる、とSlaoui氏は指摘する。

2026年サマースクールが開催されるUM6P内の施設

ベンゲリルにある、UM6Pキャンパスの航空写真
最先端の施設と持続可能な建築物を有する。©UM6P
UM6Pベンゲリルキャンパスの中心にある象徴的なパーゴラ構造
学生と教員のために日陰になった共用スペースを提供している。©UM6P
ベンゲリルにあるUM6Pキャンパスの円形劇場 
共同学習や学術的イベントのためにデザインされている。©UM6P

UM6P教授で同大学の「持続可能なエネルギー技術のための無機材料研究所」(LIMSET)の所長を務めるAbdessamad Faik氏も、同大でサマースクールを開催することは、モロッコなどのアフリカ諸国における再生可能エネルギー分野での取り組みをアピールするのに役立つと指摘する。先進国が温室効果ガスの主な発生源かもしれないが、モロッコのような国の産業でも再生可能エネルギーへの移行や脱炭素化を進めている、とFaik氏は指摘する。

UM6P教授、LIMSET所長
Abdessamad Faik氏 ©LIMSET-UM6P

例えば、モロッコには世界のリン鉱石埋蔵量の約70~72%が存在しており、そのすべてが、世界最大のリン酸塩の輸出会社であり、世界の肥料生産の中心的な役割を担うモロッコ国営リン鉱石公社(Office Chérifien des Phosphates: OCP)グループによって管理されている点をFaik氏は指摘する。OCPグループは現在、採掘から生産、輸送までのバリューチェーン全体を脱炭素化することで、製品の付加価値を高めようとしている。このような産業における脱炭素化の取り組みを扱うケーススタディが、2026年サマースクールのアジェンダにテーマとして盛り込まれるかもしれない、と彼は示唆する。
Faik氏とSlaoui氏は、モロッコの若い研究者に加え、アフリカの他の地域の研究者がUM6Pでのサマースクールに参加することを期待している。UM6Pは、クリーンエネルギーと脱炭素の分野で非常に活動が盛んだ。その点、RD20の目的にも非常に適しているとSlaoui氏は言う。
Slaoui氏によると、CNRSは数年前からUM6Pと関係があり、同大学が次世代の研究者を育成する機関になり得ることを考慮すると、Faik氏らがサマースクールを主催するのを支援することは重要だという
さらに、モロッコを開催地とすることは、地域特性を考慮する必要があることを他国からの参加者に認識させるのに役立つとSlaoui氏は主張する。例えば、モロッコの気候は非常に乾燥していて、水はとても貴重な資源です。水素のような一部のエネルギー媒体は、製造において水の利用可能性に強く依存する。したがって、水不足など、地域に固有の制約は、導入しようとする技術の種類を考える際に課題となる、とSlaoui氏は言う。
さらには、モロッコというアフリカの開催地なら、他の大陸からの研究者だけでなく、アフリカ各地の研究者同士が交流する機会を作ることができると、Faik氏は強調する。
「RD20とアフリカ諸国の間で協働の機会を持つことだけでも素晴らしいことですが、アフリカ諸国同士の南南協力を実現するのにも役立つはずです」とFaik氏。「モロッコは、私たちがどのように再生可能エネルギーを導入しているのか、私たちがどのように産業の脱炭素化を進めているのか、あるいはグリーン水素やアンモニアの開発をどのように進めているのか、等について良い例を示すことができるのです。しかし、私たちは他のアフリカ諸国からも最良のケーススタディやシナリオについて学ぶことができ、その上で、RD20のメンバー機関と協力して、今アフリカで進んでいる発展を加速させることができるのです。」

国際連携と今後の道のり

Slaoui氏とFaik氏は、RD20のようなイニシアチブの重要性は、協力し合い、互いから学ぶことであると確信している。Slaoui氏は言う。「今日重要なのは、私たち全員が同じ地球規模の課題を抱えているということです。エネルギー転換、地球温暖化といったことは世界のあらゆる場所で起こっていますよね。北でも、南でも、どこででも。それは、すべての人のための単一の解決策があるということを意味するわけではありませんが、私たちはお互いから学び、自分たちの地域の状況に適した解決策を選択することができます。私たちがよく言うように、『Think globally, Act locally (地球規模で考え、地域で行動する)』というわけです。」
こうした観点から、Faik氏は、モロッコでサマースクールを開催することに特別な意義を見出している。彼は言う。「今回は、アフリカやモロッコのような場所を初めて訪れる多くの研究者を迎え入れる良い機会になるでしょう。彼らはここで何が起こっているのか、そして発展の現状をここで見ることができるでしょう。それは、訪れる研究者たちにとって『アイスブレイク』となり、将来の多くの連携への扉を開くきっかけになるでしょう。」