Special Interviews
2026.10.05
第30回
新たなネットワーキングに期待できる南アフリカ開催
経済産業省 イノベーション・環境局  総務課国際室長・基準認証政策課国際連携担当審議官 渡部 博樹 氏
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新たなネットワーキングに期待できる南アフリカ開催

今年で第8回目となるRD20は、G20各国・地域の研究機関が集まって、カーボンニュートラルに向け話し合う会議として日本主導で出発した。それが、日本以外の国でも開催されるだけではなく、若手の研究者同士のネットワーキングも含めたサマースクールや重要課題に対して通年で活動するタスクフォースの実施など、研究者の交流の始まり、国際的なネットワーキングと発展しつつある。今年は南アフリカ共和国で開催される。その狙いは何か、経済産業省 イノベーション・環境局 総務課国際室長・基準認証政策課国際連携担当審議官の渡部 博樹 氏に聞いた。

経済産業省 イノベーション・環境局 
総務課国際室長・基準認証政策課国際連携担当審議官
渡部 博樹 氏

今年のRD20は南アフリカ共和国のCSIR(Council for Scientific and Industrial Research)の主催によって首都プレトリアで開催される。同国はまた、昨年G20の議長国であり、ETWG(エネルギー転換ワーキンググループ)を主導してきた。またCSIRはアフリカ大陸の中で唯一のRD20加盟研究機関でもあり、エネルギー転換やクリーンエネルギーへの取り組みを積極的に行っているという。
すでにこのスペシャルインタビューでも2023年8月17日にCSIRの活動を紹介している(参考資料1)。今回、日本以外の開催国を募ったところ、南アフリカのCSIRが立候補を表明した。同国の活動は経産省もよく理解している上に、各国からも支持があったため開催に至った。
アフリカの特長はやはり、豊富な再生可能エネルギーや重要鉱物の資源に恵まれているうえ、人口増加や経済成長も期待が大きい。一方でエネルギーアクセスの向上や持続可能な産業基盤の構築などの課題もあり、これまでとは異なる視点で技術や知見の共有を行うことで、アフリカ地域を含めた人材育成と新たな国際連携を促進するという期待を込めて、「アフリカから世界へ、イノベーション」というメッセージが今回のキーワードになると渡部氏は述べている。

地政学上の緊張と研究者のネットワーク

今年のRD20では、日本開催の会合はないが、経済産業省イノベーション・環境局としてはクリーンエネルギー関係のフォーラムを二つ開催するという。一つは国際的な枠組みの一つであるミッションイノベーション活動におけるCDR(二酸化炭素除去)ミッションのワークショップを9月に開催するもの。もう一つが10月に開催するICEF(Innovation for Cool Earth Forum)年次総会で、これは経産省とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が主催する国際会議である。地政学的な緊張の高まりによりエネルギーの安全保障が重要なテーマになってきており、これも議論される予定だという。

地政学的な側面も含め、国際環境が大きく変化する中で、RD20に関して経産省の役割は、変わってきたのだろうか。これに関して「RD20では、研究機関である産業技術総合研究所がしっかり運営してきた。今後も変わることはないだろう。RD20のような研究機関同士のネットワークというユニークな集まりは、国際情勢が変化する中にあっても研究協力を継続するための貴重な基盤であり、しっかり維持していきたい」と渡部氏は述べている。

各国1研究機関の枠は緩い

RD20は、当初、各国代表的な国立研究所、一つずつからメンバーを出して運営していく、と聞いていたが、最近では研究所は必ずしも1つだけとは限らないという状況が出てきている。例えばドイツはフラウンホーファー研究機構(Fraunhofer Gesellschaft)のISE(Institute for Solar Energy Systems)が参加し、さらに昨年からはヘルムホルツ協会(Helmholtz Association)のHZB(Helmholtz-Zentrum Berlin)も新たに参加している。方針は変わったのだろうか。
各国1研究機関ということは厳格なルールとは考えていないと渡部氏は述べる。というのは、すでに日本でも産総研のほかに理化学研究所やNIMS(物質・材料研究機構)も参加している上に、例えばフランスはCEA(原子力・代替エネルギー庁)だけではなく、CNRS(国立科学研究センター)も参加している。渡部氏は「一つの研究所だけで、あらゆる技術分野をカバーできる時代ではなくなってきた。いろいろな機関が参加してトータルな形で幅広い分野をカバーしていくことがよいのではないかと思っている」とその変遷を語っている。
参加機関が広がれば広がるほど、いわゆるネットワーク、すなわち若手研究者の交流の場が広がることは確かだ。加えてタスクフォースを実行する場合でも様々な切り口が見えてくる。「ただし、各機関がどのようなコミットメントを持ってRD20の活動に参画し、継続的に貢献できるかが重要である。その上で、メンバーシップの拡大やRD20の将来の在り方については、参加機関の総意として進めていかなければならない」と渡部氏は強調した。

AI for Energy / Energy for AI

「エネルギー問題をエネルギー関係者だけではなく、AIや量子技術を使って問題を解くこともありうる。AI for Energy やQuantum for EnergyなどのAIや量子コンピュータはツールであるため、それをエネルギー研究者が利用することはごく自然の流れであろう。RD20というクリーンエネルギーの会合は、他分野との協力や他分野の技術の導入も今後十分ありうる。新分野からの参入で、タスクフォースがより充実する内容になれば将来の国際共同研究などにつながる可能性もある。G20加盟国・地域の研究者にとどまらない広がりも出てくるだろうが、この問題も話し合うことが重要になる」と語っている。
今後はAIの活用がエネルギー問題の解決になりうるため、AI for Energy だけではなく、Energy for AIという標語も加えてエネルギー問題の解決を進めることが必要かもしれない。
加えて、AI分野に限らず技術の実装という点になると、例えば技術とビジネスの結びつきが強いシンガポール等の国の参加も望ましい。来年の東京開催以降も、参加国・参加機関の問題は議論になるだろうとみている。

将来の想いは国際共同研究への発展

今年の南アフリカ開催で期待できることは、やはりネットワーク作りではないだろうか。南アフリカ開催となればアフリカの国々からも参加できるだろう。また新しいテーマについては、AI for Energyというワークショップが今回タスクフォースに格上げされることに渡部氏は期待を持っている。これも今回議論して実現してもらいたいという。さらに国際共同研究になればRD20の意義がもっと深くなりそうだ。

参考資料
1. 「南アフリカの特長を生かしグリーン水素のコラボに期待」、スペシャルインタビュー、RD20ウェブサイト、(2023/08/17)
https://rd20.aist.go.jp/ja/interview/2023/0817/

セミコンポータル 編集長 津田建二